Chie Kyan
About
喜屋武 千恵(CHIE KYAN)
アーティスト・ステートメント
日本画で使用される膠や天然顔料の原始的な魅力と美しい線に惹かれ、沖縄県立芸術大学において日本画を学んだ。
近年は、個展を中心に創作活動を展開し、母性・祈り・鎮魂をテーマに、沖縄の素材(赤土、琉球藍など)や天然顔料にこだわり創作している。沖縄の赤土や琉球石灰岩、それらは単なる物質ではなく、ここに生きた全ての命、記憶が溶け込んでいるからだ。
目には映らない大切なものを可視化すること、かつて古代の人々がシンプルに絵を描いていたように描きたい。縄文土器にも見られる「円環」「螺旋」「渦巻き」などの自然の中に存在する形状を、天然顔料を用いて描き続けている。自然界に存在する命の「いろ」と「かたち」には、人々を癒し励ますエネルギーが秘められていると考える。
大学卒業後、自身の創作に行き詰ったとき、琉球の絵師、自了(城間聖豊)の「白澤の図」に出会い衝撃をうけた。生き生きとしたリズミカルな線描、どことなくユーモラスでおおらかな表現、激動の時代を逞しく生き抜いてきた先人のしなやかな強さに、創作し続ける勇気を貰った。
琉球絵画という概念のまだない頃であったが、その輪郭に触れたいとの思いが強くなった。しかし、その多くが先の大戦によって、消失していた。
2001年「失われた琉球絵画の復興」をテーマに、沖縄県人材育成財団の助成を受け、中華人民共和国・魯迅美術学院に研究留学した。資料収集と模写を行い、琉球絵画表現に重要な筆法(工筆画)について学んだ。その後、2015~2018年には「琉球王国文化遺産集積・再興事業における絵画復元研究」に携さわった。現在は、研究と保護を目的として、石垣島の旧宮良殿内(国指定重要文化財)板戸絵の調査研究を行っている。 先人の残した手わざを学ぶことで、アジアという大きな繋がりの中、琉球(沖縄)にルーツを持つ新しい表現を模索している。
琉球(沖縄)は、その長い歴史の中で、政治的に今もなお翻弄され続けている。
そして、世界中でも同様に悲惨な現実は続いている。
私にとって、描くことは祈りそのものである。これからも、鎮魂と平和への祈りを捧げていきたい。
経歴
1969年 沖縄県 那覇市生まれ
1993年 沖縄県立芸術大学美術工芸学部美術学科絵画専攻日本画コース卒業
1995年 沖縄県立芸術大学大学院造形芸術研究科環境造形専攻絵画専修日本画コース終了
2001年 国立魯迅美術学院 中国画系(国外派遣研究員として中華人民共和国に3ヶ月留学)
現在 沖縄を拠点に創作。沖縄県立芸術大学非常勤講師 他
主なグループ展
1993年 『りゅうせき美術賞展』那覇市民ギャラリー/沖縄
1994年 『第5回 川端龍子賞展』和歌山県立近代美術館/和歌山
『第46回 沖展』浦添市民体育館/沖縄
1995年 『日本画二人展~喜屋武千恵・嘉数武弘~』那覇市民ギャラリー/沖縄
1996年 『沖縄女流美術展』初出品以後2005年まで毎年出品、那覇市民ギャラリー/沖縄
1997年 『田中一村記念 第1回奄美日本画大賞展』巡回展/奄美・沖縄・鹿児島・東京
2000年 『アジマー展』~絵画専攻教員、卒業生による展望と交叉~
沖縄県立芸術大学 附属図書芸術資料館/沖縄
2001年 『那覇造形美術学院講師10人展』浦添市美術館/沖縄
2002年 『今帰仁御神肖像画展』今帰仁/沖縄
『那覇造形美術学院講師16人展』那覇市民ギャラリー/沖縄
2003年 『宝(PAO)展~喜屋武 千恵×山城 芽~』山の茶屋 楽水/沖縄
『本・読書・図書館イメージ美術館~喜屋武 千恵×山城 芽~』
2004年 『NAHABI-EXHIBITON 2004』浦添市美術館/沖縄
『30周年記念女流美術展』読谷村立美術館、那覇市民ギャラリー/沖縄
2005年 『HAP展』那覇市民ギャラリー、前島アートセンター/沖縄
2006年 アサヒ・アート・フェスティバル『クァッチーあしび』沖縄市銀天街/沖縄
『今いる風景―沖縄を描く10人展―』ギャラリーアトス/沖縄
『平和記念公園芸術祭』―沖縄県立芸術大学開学20周年記念―平和記念公園資料館/沖縄
2010年 『沖縄県立芸術大学卒業・終了制作優秀作品展~みんなここから始まった~』
沖縄県立芸術大学 附属図書芸術資料館/沖縄
2011年 『絵本「ぐるぐる」原画展』ガーブドミンゴ/沖縄
2012年 『第8回菅楯彦大賞展』京都文化博物館/京都・倉吉博物館/鳥取
2013年 『沖縄~現代日本画作家展~2013』
沖縄県立博物館・美術館 県民ギャラリー1・2・3/沖縄
2014年 『今いる風景 PART2』ギャラリーアトス/沖縄
2017年 『沖縄~現代日本画作家展~2017』沖縄県立芸術大学 附属図書芸術資料館/沖縄
2018年 『沖縄を描いた作家展』佐喜眞美術館/沖縄
2019年 『美術の先生が作った作品展 Vol.7 』
沖縄県立博物館・美術館 県民ギャラリー1・2・3/沖縄
2020年 『佐喜眞美術館収蔵品展』佐喜眞美術館/沖縄
『手わざ展~琉球王国の文化~』沖縄県立博物館・美術館/沖縄
『平和藝術展~アートを通して平和を繋ぐ~』ギャラリーくぼた/東京
『沖縄アジア国際平和芸術祭2020・首里城再興まぶいぐみアートプロジェクト』
那覇市民ギャラリー/沖縄
2023年 『素材と表現―膠がつなぐひととひと―』キャンプタルガニー/沖縄
沖縄を見つめた表現者たち 展 佐喜眞美術館/沖縄
主な個展
1998年 「赫土の国(あかつちのくに)」ギャラリーACT第15回企画展/沖縄
2001年 『往にし方の琉球王朝』ギャラリーアトス/沖縄
~名嘉 正八郎著「」出版記念~
2006年 『喜屋武 千恵』展 喫茶 つる/沖縄
2017年 『やわらかな水・つよき土』 キャンプタルガニー/沖縄
2019年 『-Life is a Journey-人生は旅である』ギャラリーアトス/沖縄
2022年 『RESONATE-共鳴‐』ギャラリーアトス/沖縄
ワークショップ
2011年 沖縄ねんりんピック「かりゆし美術展」日本画審査員(沖縄県社会福祉協議会)
2013年 実技講座 日本画ワークショップ (沖縄県立博物館・美術館)
「平山郁夫展」関連イベント
2014年 実技講座 日本画ワークショップ (沖縄県立博物館・美術館)
happ東日本大震災被災者支援活動「うつくしまちゅらしま交流イベント」
2017年 「琉球王国文化遺産集積・再興事業 染織分野におけるワーキング」
(沖縄県立博物館・美術館)
染織分野の制作者を対象に、墨摺り、運筆や筆法のレクチャーを行った。
2018年 「琉球王国文化遺産集積・再興事業 陶芸分野における絵付けワーキング」
(沖縄県立博物館・美術館)
陶芸分野の制作者を対象に、運筆や筆法、絵具の表現等についてレクチャー。
研究発表等
2002年 「八重山の絵画~琉球絵画の一側面~」
八重山研究会において研究報告/沖縄県立芸術大学附属研究所
2015~2018年「琉球王国文化遺産集積・再興事業における《四季れい毛花卉図巻》研究協力者と して復元工程模型制作」
絵画部門の孫億筆《 四季翎毛花卉図巻》東京藝術大学保存修復科日本画研究室受 託事業研究協力者として参加(制作工程模型を制作)
2018年 「琉球王国文化遺産集積・再興事業報告会」
〜琉球絵画について〜発表/ 沖縄県立芸術大学 大講義室
「平成29年度琉球王国文化遺産集積・再興事業報告会 手わざを探る 王国の美」
「四季翎毛花卉図鑑」製作工程見本(4点)について発表
/沖縄県立博物館・美術館3階 講堂)
執筆
2000年 琉球新報コラム「落穂」
2010年 琉球新報 展評 『―氷鏡の月―山城 芽展』
2018年 沖縄タイムス展評『丸木 位里・丸木 俊・丸木 スマ・大道 あや展』
2019年 『2018年度 教職課程年報vol.4 』53~61頁 /沖縄県立芸術大学
「日本画における模写教育についての一考察」〜古典模写の実践と課題~
2018年 沖縄タイムス展評『丸木 位里・丸木 俊・丸木 スマ・大道 あや展』
2020年 琉球新報 展評『山岸遼士絵画展「日々とものがたり」』
2021年 『Journal of Asian Humanities at Kyushu University VOLUME 6,』
2022年 琉球新報 展評『前田比呂也展/代わりに私がいきてあげようかな』
受賞歴
1993年 沖縄県立芸術大学卒業作品 買い上げ
1994年 第5回 川端龍子賞展 優秀賞
第46回 沖展 奨励賞
1997年 田中一村記念 第1回奄美日本画大賞展 入選
2002年 今帰仁御神肖像画展 優秀賞
2012年 第8回菅楯彦大賞展 入選
2020年 第54回 沖縄タイムス芸術選賞 奨励賞(絵画)
助成
2001年 5月~8月
沖縄県人材育成財団助成事業 国外派遣研究員
中華人民共和国(魯迅美術学院 中国画系)研究留学
2019年~2020年
公益信託 宇流麻学術研究助成基金受託事業「失われた琉球絵画の復興~素材及び技法研 究宮良殿内を手がかりに~」
2018年4月~2021年3月
一般社団法人 沖縄美ら島財団助成事業「宮良殿内板戸絵の現状と展望」
2020年4月~2023年3月
令和2年度 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金) 基盤研究(C)
「宮良殿内板戸絵の素材及び技法研究~琉球絵画の一側面~」
メディア
2022 NHK「日曜美術館『失われた時を求めて~沖縄本土復帰50年』」に出演
琉球王国文化遺産集積・再興事業「手わざ事業」に参加
パブリックコレクション
沖縄県立芸術大学
沖縄県立博物館・美術館
和歌山市立博物館
佐喜眞美術館
今帰仁商工会
株式会社JCC
キャンプタルガニー